悲惨な事件があった家へ雑誌の取材に行った結果、会社をクビになった。その時の話をする…

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雑誌の心霊スポット企画を受け持つ事になった投稿主は、過去に悲惨な事件があった家を取材先として選んだ。それは投稿主の地元において「お化け屋敷」としての知名度があり、かねてより様々な幽霊の目撃情報がある家だった。
元より幽霊を信じない投稿主は、その家で白い着物の女を見た事があるという同級生を連れていくのだが───



 二十五歳の夏、勤めていた編集プロダクションをクビになり、幡ヶ谷のアパートで悶々としていた。なにしろクーラーがないので暑くて暑くて、
なおさら苛ついた。
 で、その編集プロダクションをクビになったときの話をします。長文お付き合い願います。



 この編集プロダクションという会社(仕事)は大手出版社から依頼を請ければ、なんでもやる。本、雑誌、企画物のページ。内容に至ってはフ
ァッションからプロレス、グルメなど幅広くやる。
 で、ある月刊誌から「これから暑くなるし、そろそろ」ということで心霊スポットの企画8ページが回ってきた。私もそのうちの2ページをうけもった。雑誌を作る側に居た分、このテの話の大部分が「やらせ」だということも知っていたし、自分なりには「テキト-にウソでも書いとけばいいか」程度の気持ちだった。                     



 幸い実家が横浜だったので心霊スポットには事欠かない。有名なところだとKトンネルとか、廃墟病院とか昔よく行った。
 ただ、出尽くしている。
 そこで、自分が卒業した中学の裏にお化け屋敷があったのを思い出した。「じゃあ、あれにするか」と、取材を兼ねて実家へと帰ることにした。



 このお化け屋敷、当時雑誌でも何回か取り上げられたことがあり、学校周辺ではちょっと有名だった。住んでいた一家が惨殺され、その後、庭で女性の首吊り死体が発見されるなど、取材対象としてはなかなかの代物だ。
 私の通ったH中学校のグラウンドから50メートル位登ったところにあり、体育の時間に「鎌を持った人が見ていた」とか、下校時に廃屋を覗いたら「白い着物の女が正座していた」とか話題に事欠かない。
 ただ、首吊りは知っていたが、一家惨殺は本当かどうか定かではなかった。



 で、私は幽霊を全く信じていないが、中学高校と同じ学校に行った同級生のYは自称霊感があるらしく、昔、肝試しに行ったときここで幽霊を見た。「あそこに何かいるよな、いるよな」と廃屋の2階の窓を指差し同意を求められたが、私には何も見えなかった。
 Yはその後グラウンドまで降りてきてうずくまった。彼曰く「ねじれた白い人影が、窓から出たり入ったりしていると」真っ青になって震えていた。
 そこでYには悪いが、協力してもらい、彼のインタビューを交えたお手軽記事を書くことにした。



 自宅からYに電話をすると、予想に反して簡単に承諾を得られた。夜9時にファミレスで待合わせをし、小一時間昔話をした。
「卒業してから10年、こんな形でH中学校を訪れるとは思わなかった」と苦笑いのY、以外とサバサバしていた。今考えるとこの辺りから変になりだしたのだが、車に乗り込むとYは妙なことを言い出した

「今日行くのやめないか」

「何で」と私は聞き返した。

「いや、なんとなく・・・。それにもうあそこ何にもないよ」
「はぁ?早く言ってよ」
「だって、何にもないから俺行くんじゃねーか」

 私がやっていた雑誌取材は比較的こういうことが多かった。

「しょうがないとりあえず行って、有る事無い事書くしかないか」。



 H中の校舎脇に車を横付けすると、懐中電灯と小さい一眼レフを持って廃屋に向かった。移動中Yは無言だった。
 廃屋はYの言う通り跡形も無く、その周辺は深く掘り返えされて大きな穴が空いていた。その深さは10メートル位あり、工事用の吊り橋が掛かっていた。
 Yは私より少し下がった場所から黙ってその橋を見ていた。Yの様子が気になったが、仕事だけ済まそうと三脚を用意した。周辺でシャッターを切りながら、Yに声をかけた。

「具合でも悪くなったか?」
「あのさ・・・」
「なに」

 Yは話し出した

「さっきここに乗ってきた車、誰の」
「会社のだけど、なんで」
「いや、後で話す。それからあの橋には、近づかないでな・・・」

 とYは言った。その顔は真っ青だった。



 Yは突然座り込んで、震えだした。そして「吊り橋の方で誰か呼んでないか」とつぶやいた。「やめろよ」とちょっと怖くなり、辺りを見回した。橋の上には誰もいない。
 さすがに気味が悪いので、わたろうとは思わなかったが、写真を撮っておこうと近づいた。やっぱり誰もいない。
 ところが、撮影位置を考えていたら、なぜか橋に一歩踏み入ってしまった。
 後悔した。



 その瞬間、急に空気が冷たくなり、にもかかわらず汗が吹きだし始めた。なぜか解らないが、とにかく橋の下だけは見ないで置こうと思った。が、私の目の前、ちょうど吊り橋の真中くらいに、なにか得体の知れないものが座っているのに気が付いた。

「女がいる・・・」

 女はこっちをジーッとみていた。体の自由は効くのだが、吊り橋の上で動けなくなってしまった。



 そのとき「戻って行い」とYが大声を出した。私はこの声で我に還り、Yの方を振り向き愕然とした。座り込んでいるYの背後に女がいる。
 女は白い着物をきていて、Yの顔を見下ろすようににして立っていた。Yはそれに気付いていない様子で、私は恐怖で全身の毛がさかだった。
 とにかく逃げることを考え、吊り橋から地面へとピョンと飛び移った。その瞬間吊り橋のワイヤーがビーンという音とともに切れた。もしあのまま橋の上にいたら、おそらく転落していただろう。
 私はもう恐怖で分けが解らなくなり、ただひたすら車まで走った。Yには悪かったが見捨てて走ってきてしまった。



 後ろから「うわああああ」と雄叫びをあげながらYが追いかけて来た。その声でまた恐怖がこみ上げてきて、ひたすら走った。
 私はYと汗だくで車に乗り込むと、直ぐに車を発進させた。そして学校から道路に出たところで2トントラックと正面衝突した。幸い二人ともケガは無かったが、会社から借りてきた車は全損だった。



 翌日会社には出勤したが、さすがに原稿は書く気になれず、他の人に書いてもらった。
 二日後に車を全損させたせいで、社長にクビを通告された。しばらく東京で仕事を探したが貯金も底をつき、実家に帰ることにした。



 これと前後して不思議なことがあった。当時携帯が出始めた頃で、充電が切れているにも関わらず、呼び出しが鳴った。直感的にYじゃないかと思い、コンビニからY宅に電話を入れた。Yの母親が出て、おとといから連絡がつかないとのこと。
 その後、これに関係してか否かわからないが、四ヶ月後に、彼の田舎、山梨で無事見つかる。



 翌日幡ヶ谷のアパートを引き払い、実家に帰るとデスクから連絡が入った。
「お前のフィルムに変なものが写っているのだが」とのこと。
 内容は確認しなかったが

「写真はそっちで始末してください」

 そそくさと電話を切った。     

 おしまい



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