【奇妙】本当に危険な場所には「辿り着けない」姉の話(他1話)

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1話目
 969:
従姉は俺が高校生の頃既に社会人だったから、今はもう30をとうに過ぎている筈だ。特に若作りな印象も受けないのだが、おっとりしているせいか妙に子供っぽい。
彼女は、休日には自宅から坂を上がる片道30分程のコースを散歩して、桜並木の続く山の上の住宅街のパン屋で朝食を仕入れて来るのが習慣だそうだ。


従姉の家でお彼岸の人寄せがあって、俺がそのまま泊まった年があった。彼女の弟とはオタ友でもあるので、泊まり自体は珍しくはないのだが。
因みにどちらも「いとこ」で紛らわしいので名前を出すと、姉の方が亜矢、弟の方が智宏だ。


前日の飲み会の席で、この姉弟の父親が俺のオヤジに言った。

「××の方に、変な家があるんだよねぇ。」

話によるとそこは畑の中の一軒家で、大分前から空家らしい。 事件があったとは聞かないが、住む者もなければ取り壊されもせずそこに在る。
そして、後からその家を囲む様に建て売り住宅が出来た。売りに出されたその家を見に行ってみたところ、四軒とも、中心のその家に面している側にだけ一切窓がないのだと言う。


俺が興味津々で聞き耳を立てていると、伯父さんは苦笑いを浮かべた。

「ナオは行くなよ。お前そう言う話好きだからなぁ。」

俺はぶんぶんとかぶりを振った。ありえない。凸とかする様なタイプではないのだ、俺は。寧ろ避けて通るくらいだ。



朝目が覚めると、前夜飲んだくれていた智宏はまだ夢の中だった。
先に洗面所で顔を洗っている時に、亜矢ねえが現れた。例の散歩に行くところらしい。
智宏はまだ起きないだろうし、俺は彼女について行く事にした。その道すがら、こんな事があった。

 

970:
通りを逸れて脇道に入ると、そこは田畑の間に点々と真新しい家が建つ住宅地だった。 今来た道と交差する県道に向かって、斜めにショートカットするらしい。


俺は昨日の伯父の話を思い出して、亜矢ねえに場所を聞いてみた。すると、目的地近くまで県道に出ないで住宅地の中を上がって行っても、坂の上に出る筈だから行ってみようかと言う。
目の前まで行くのは嫌だが、遠くからどんな感じか確認したかった。
俺は怖いのと好奇心を秤に掛けて、朝で明るい事に背を押され、彼女に従った。


畑と住宅の間をぐるぐる回り、畑が途切れる辺りで向こうに団地が見えた。あれぇ…?と亜矢ねえが呟く。

「何?」
「アレ、●が●団地。あそこまで行くと住所が●が●なんだよね…。」

従姉の視線につられ顧みるが、後方には五軒固まって建つ家は見えない。しかし道はもう県道へ出る通りか、団地へ向かう急坂しかない。

「ごめん、方向音痴…。」

俺は「帰り道でいいよ。」と答えたが、彼女は何だか不安げだった。


結論から言うと、帰り道も全く同じ事が起こった。 県道から横道に入って、ぐるぐる歩くうちに気付けば大通りに出てしまっている。
何だかおかしいなぁとは思ったのだが…。
昼近くなって起きて来た智宏がパンを齧っているところで聞いてみたら。

「アネキのあれねぇ…何てか、“辿り着けない”っての?それなんだよね。」

本当に危ない所には、行きたくても何故か辿り着けない。そんな人っているんだよね、と従弟はこともなげに言った。
後でオフクロに聞いたら、どうやらバアちゃんもそんな体質?らしい。つまり窓のない壁に囲まれた家は、洒落にならない様な…。
俺は結局、その家の場所が未だに分からない。

 

2話目
974:
“辿り着けない”従姉がいる。本当に危ない場所には、行きたくても行かれない体質みたいなものだ。
従姉…亜矢ねえの事で、彼女の弟の智宏が話してくれた事がある。


智宏が高校生の頃、つるんでいた友達が住んでいたマンションがある。四方を居住区が囲み、中央にパティオがある煙突の様な構造。エレベーターホールの横のドアから中庭に出られる、当時としてはなかなか洒落た建物だった。
いわゆるニュータウンの中で、住人は他から来た家族ものばかり。亜矢ねえの中高時代の同級生も何人かいたそうだ。


春先、夜の十時近くまで友達の家にいた智宏がエレベーターを降りると、脇のドアの向こうに子供がいた。
ドアは真ん中くらいの高さで区切られて、上が透明なガラス、下が霜付きのガラスで、街灯に照らされたパティオの中程にある、ハナミズキの木が見える。
その下の茂みの向こうで、小さな頭が行ったり来たりしていた。


ああ、こんな時間なのにまだ遊んでる子供がいるなぁ…。そんな事をぼんやりと考えていたら、何もない場所で蹴躓いた。
体勢を立て直してもう一度見ると、さっきの子供がドアの間際まで来ていた。仕切りの上、透明なガラスにぴったりと顔を寄せて、智宏を見て笑っている。転んだ所を見ていたのだろう。
智宏はバツの悪い思いで膝の汚れを払い、苦笑いした。

 

975:
そこでふと気がついた。
ドアの上にある蛍光灯に照らされた、青白い子供の顔。
でも、仕切りの下、霜付きガラスには何も映っていないのだ。

映っていない!

そこにあるべき子供の首から下が映り込んでいない。パティオの床の赤茶色の素焼きタイルと、茂みの緑しか見えない。子供はべったりとガラスに顔をつけているのに。笑っているのに。
うわっ!と小さく悲鳴を上げて、智宏はエレ-ベータ-ホールから転げ出た。


帰宅して姉にその話をすると、亜矢ねえは首を傾げたと言う。

「…中庭に出るドアなんてあったっけ…?」

ドアは確かにあるそうだ。
後日智宏がそこに住んでいる友人に確認すると、その中庭はいくつかのパターンの“出る”話があると聞かされた。
中庭だとか鯉のいる池だとか、そんな物が大好きな子供っぽい姉が、パティオの存在に気がつかない訳がないと智宏は思った。
気がつかないのなら、やっぱりそこには…。

 

977:
乙です。
おもしろかった。
亜矢さんは守護霊か何かに守られてるのかもね

 

981:
>>976
乙ですノシ
面白かったですよ~。俺の知り合いにも辿り着けない人がいるよ。
あるんだよね、そういうのって

 


引用元::https://hobby10.5ch.net/test/read.cgi/occult/1206356541/



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