【長編】千葉の田舎の学校に設けられた「数学準備室」、何故か違和感を感じる→そこには教師達により隠された秘密があって…

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投稿主が通っていた中学校には「数学準備室」があり、その名の通り数学教師が利用していた。
しかし、異様に広かったり数学教師が室内でおかしな行動をしていたり等、準備室自体に違和感を感じる事が多かったという投稿主。

その違和感の正体とは───!?



長いです、無駄な文章も多いと思いますがぬるい目で見守ってください。

私が通っていた中学校での話です。
昔千葉の田舎に住んでいました、
南房総の小さな町で、最寄りの駅まで車で40分かかります‥。

そこの中学校なのですが、よくがっこうには「準備室」ってありますよね。
まあ大抵は理科準備室、音楽準備室くらいなものですけど。
その中学校には数学準備室なんてものがあったんです。
数学なんて、実験道具を扱う理科や、楽器をたくさんしまっておく音楽室に比べて、圧倒的に必要なのものなんてありませんよね?
なのにあったんです、数学準備室。国語も社会もないのに、数学準備室だけ。

違和感はそれだけではありません。
その数学準備室、異様に広いんですよ。
普通の教室くらいある。10台のアコギとか、吹奏楽部の大きい楽器がしまってある音楽準備室なんかより広いんです。
でも数学なんて備品いりませんから、スッカスカ。本当にスッカスカ。
違和感だらけでした。

まあ一応、数学準備室なんて名前ついてますからね、数学の先生が一応、使ってはいます。
だから数学の授業に使うものが一応は置いてあるんですけど、その置き方もちょっとおかしくて。
なぜか、広い教室の前方、黒板側に一台ポツンと置かれたそこまで大きくない机の上にのみ、教材が置かれているんです。
机からはみ落ちそうなくらいぎゅうぎゅうに。
なぜそれがおかしいかって、どの教室にもそうですけど、その数学準備室にも、教室の後ろ側に生徒用のロッカーがあって、そのロッカーの上がとても広いので、他の教室ならプリント等はそこにおくんですよね。
しかも準備室は空き教室なわけですから、他の教室と違ってロッカーの中に生徒の荷物もなく、なんでも起き放題になっているのに、なぜか、数学の先生はそこにものを絶対置かないんです。

奇妙なんです。
でもこの違和感を覚えていた人は、学校の中ではそんなに多くなかったと思います。
理由としては、数学の先生、滅茶滅茶怖かったんですよね。
40代の強面のおじさん先生で、あまり好かれていなかったので、その先生に遭遇するかもしれない数学準備室なんて、わざわざ覗く人、少なかったと思います。

ただ私はたまにのぞいていました。
なぜなら、数学準備室、すごく使いたかったんですよ。
私は吹奏楽部に所属していて、トランペットを吹いていたんですけど、それぞれ楽器ごとに練習=パート練習 する時に、音が混ざって訳が分からなくならないように、学校中にバラけて練習するのですが。
トランペットのパート練習の場所は、二階の一年生の教室でした。
まあ、遠いんですよ。
音楽室は4階ですから、単純に遠いのが嫌だった。
だからこそ私は、普段から誰もいなくて、三階の階段近くにある他のパートも使っていない数学準備室をトランペットのパート練習場所に出来ないのかなあなんて、よく考えてたんです。

ある日のこと、私はその時一年生で、自分で決めることなんて絶対できませんから、2年生の先輩(夏が終わった時期で、コンクールを序盤で敗退してしまったうちの部では三年生は受験のためほぼ退部していました)に聞いてみたんです。
「数学準備室、使えないんですか?」
先輩は「ああ」といった表情で、「去年ね、」と事情を教えてくれました。

去年、トランペットと同じくらい練習教室が遠いクラリネットのパートリーダーが、顧問に数学準備室を使わせてくれないか直談判したそうです。
しかし顧問は、それを許可せず、それ以来数学準備室は吹奏楽部内で使用禁止の認識があるとか。
「なんでダメなんでしょうね」
「さあ。数学の三浦怖いし、うるさいと怒られるんじゃないの」
「ああ、なるほどw」
この時はなんとなく納得したんですけど、その後数学準備室の様子をチラチラ見てみても、そもそも数学の先生はほぼそこに来ないようで、一度も鉢合わせはしないし、
さっき言ったように教室は黒板側の畳一畳程度のスペースしか使用されていないので、とてももったいなく見えました。
まあ、いくら指を咥えて見ていても、先輩にそんな話をされてしまってはそれ以上言うこともありませんから、段々と数学準備室のことなど頭から無くなっていました。


ここから話は私が二年生になった春まで飛びます。
新しくできた後輩ともいい関係が作れそうだったし、楽器も上達したしで、部活は一年生の時よりもずっと楽しいものになっていました。
そんな折、顧問の女性の先生が妊娠し、体のために夏休み前には顧問を辞めてしまうことになりました。
教師自体はギリギリまで続けるようですが、部活の顧問は帰る時間もかなり遅くなるし、重い楽器を運ぶことなどもあり体力を使いますから、早めにお辞めになるといいうことでした。
その女性顧問はとても生徒に人気があり、美人で厳しいながらも温かみのある先生で、私もとても好きだったので残念でしたが、お腹の子供の健康の方がずっと大切ですから、部員はみんな先生を祝福していました。
その報告から一カ月後には後任の顧問も決まり(特別養護教室を受け持つ先生でしたが、音楽の教師の資格もある方で、次の音楽教師が来るまでの仮顧問です)、お腹の子供のことを考え、その時期には新顧問と女の顧問が交代で部活に来るようになりました。

5月の終わり。
三年生と妊娠中の顧問は修学旅行に行くので(妊娠中でしたが安定期だったことと、生徒たちの強い希望もありあまり動けないことを他の先生たちも分かりきった上で一緒に行くことにしたそうです)、吹奏楽部は私たち二年生・一年生と新顧問だけの日が続きます。
その日が二年生になって初めての、「先輩のいない部活」でした。
同じトランペットの同級生も他に二人いますが、私は副パートリーダーだったので、部長のいないその日は全体挨拶や練習目標決め等を任されていました。

だからこそ、すこし調子に乗ってしまっていたかもしれません。
特別養護教諭の新顧問が普通教室の事情に疎いことを分かりきった上で、私は聞いたんです。
「トランペットパート、数学準備室使ってもいいですか?」
新顧問は特に考える様子もなく、「三浦先生はお使いではないの?使ってないならいいですよ」と簡単に許可をくれました。
私はその簡単な返事に拍子抜けしつつ、トランペット全員を引き連れて数学準備室に向かいました。
事情を知らない一年生と違い、去年私が先輩に数学準備室を使えない理由を聞いていた現場を見ていた同級生二人は、「ほんとにいいの?」とすこし不安げでしたが、いつもの練習場所よりぐっと近い数学準備室に到着すると、文句も晴れたようで、各々好きな場所を取って練習し始めました。
教室の黒板側には教材が山積みですし、他の教室と違って生徒用の机はありません。
いつも窓を開けて外に向かって吹いてる同級生の一人を除いて、私を含む他の4人は(トランペットパートは一年生ふたり、二年生3人です)、自然と教室の後ろのロッカー前に黒板の方を向いて並びます。
何か置ける台があった方が、便利ですからね。

しばらく練習に夢中になっていたのですが、だんだんと疲れてきた私はトランペットをロッカー上に起き、準備室を見回しました。
どこから持ってきたのか、それとも気づかなかっただけで最初からこの教室にあったのか、いつのまにか窓際で練習している同級生(彼女はいつも髪にリボンのアクセサリーをつけているので以下リボンちゃんとします)の足元に一脚の椅子がありました。
リボンちゃんは一度集中するとなかなか練習をやめない子なので、話しかけませんでしたが。
一心不乱に練習するリボンちゃんと違い、他の子は立ちっぱなしの疲れもあるのか(普段一年生の教室では座って練習していました)、みんなちょくちょく休憩しているようでした。
それを見て私は、いくら近くても椅子がないと疲れるな、やっぱりここはやめといたほうがいいかもなーなんて思っていました。

集中力が切れていた私は、なんとなく教室前方の教材の山へ近づきました。
数学のプリントの山の上に、黒板につける磁石付きの三角定規や、大きなビーカー(計算問題の実演に使うのでしょう)が置いてあるのですが、なんとなくその全ての時間が止まって見えました。
うまく言い表せないのですけど、長く使われていないもの特有の、感じ。。。
実際定規に触れると、薄く指に埃が付きます。
そういえばこの教室は、掃除しているところを見たことがありません。
数学準備室のある三階は私たち二年生の教室もある階ですから、掃除しているところを見たことがないということは、生徒の掃除場所にそもそも入れられていないのでしょう。
それにしても、これでは数学の先生すらこの準備室をロクに使っていないことになります。
一年生の時何度かココを覗いても、誰にも遭遇しなかったのはそういうわけだったのでしょう。

ますますこの教室の存在意義を疑問に感じていると、後ろで「おっ?!」と声がして、私は驚きつつ振り返りました。
みるとロッカー前で練習していた後輩のひとり(彼はおとなしい子なので以下しずかくんとします)がよろけたような体勢で、胸元の楽器だけは守ろうと身をよじっているところでした。
「何、どうしたの笑」と話しかけると、しずかくんは足元のイスを顎でクイっと指して、「いきなりなんか押されて。。」と。
イスに押されるって、そんなバカな。
「ていうかそれどっから持ってきたの?」
この教室には椅子なんてなかったはずです。リボンちゃんが多分どこからか持ってきた(?)一脚のイスを覗いて。
リボンちゃんを見ると、さすがにトランペットをやめてしずかくんのほうを見ていました。
その足元にはーーーー。

あれ??

「いや知らないっすよ。俺イスなんて。。。」
リボンちゃんの足元に、さっきあったはずの椅子がありません。まあということは、誰かしらがいたずらでもしたのでしょう。
だれかがリボンちゃんの足元にあったイスを、しずかくんの足元まで移動させて軽く椅子で小突いた。
それが真相でしょう。
私は笑って、もう一人の同級生(彼女はポニーテールなのでポニテちゃんとします)に、「ポニテちゃんが犯人でしょ。1年生いじめないでよw」と彼女の仕業だと決めつけてかかりました。
理由は簡単です、たんに彼女はそういう子なんです。
ちょっとお茶目でよくいたずらをする子。
もう一人の後輩もしずかくんと同じでおとなしい子ですし、リボンちゃんのトランペットの音はしずかくんの悲鳴が聞こえる直前まで鳴っていました(リボンちゃんは部内でも2、3番目に上手い子なので音の識別が簡単です)から、ポニテちゃんでほぼ確定だと思いました。

しかしポニテちゃんはとぼけた顔で、「あたしずっと譜読み(目だけで楽譜を読むことです)してたけど」と。
「またまた?」と返しつつ教室の後ろに戻り、しずかくんの足元のイスをリボンちゃんのところに戻そうとしました。
するとリボンちゃんも不思議な顔で、「なんであたし?」と聞いてきます。
いやリボンちゃんがこれ持ってきたんじゃないの?と聞くと、「知らないよ。てかこの教室椅子あったっけ」
それ、私がさっき抱いたのと同じ疑問。。。
「あたしもそれ思った」
ポニテちゃんも乗ってきます。

みんなで少し頭を抱えました。
といってもまあ、あるものはあるんですから、そこまで深く考える必要はありません。
教室に椅子、別に不自然なアイテムでもないですし。
気づかなかった、ただそれだけのことでしょう。
移動した件については、ポニテちゃんは否定しましたが、まあおそらく彼女のいたずらです。
それに練習時間も残り半分を過ぎていましたので、私は手を叩いて、練習に戻ろう?とみんなに声をかけました。
準備室にパーっと明るいトランペットの音色が響きます。
チラッと窓の外をみると空はほんのり夕焼けで赤くなっていました。

それから20分も経っていないと思います。
私の視界は譜面台の上の楽譜で埋まっていましたから、それには本当に驚きました。
突然目の前から楽譜が消えて、準備室の景色に変わったのです。
最初は譜面台が倒れたのかと思いました。
しかし譜面台はさっきよりずっと背を低くして私の前に立っていました。
譜面台を使ったことのない方にはイメージしにくいかと思うのですが、譜面台はネジを緩めて上下にスライドさせることにより高さが調整できるようになっているのです。
学校の備品の譜面台なんて大抵使い込まれたもので、ネジがイかれて固定出来なくなっているものも多いので、「これもか。。。」と顔をしかめつつネジ部を確認します。
しかし譜面台のネジは固くしまっていました。
不思議に思いつつネジを緩め、元の高さに戻そうとすると、真っ黒なはずの譜面台の足がまっすぐに白く剥げています。
それはネジ部に触れる場所でした。
触れると指に黒い塗料の粉が付き、その様子はまるで…。

窓際から視線を感じそちらを見やると、リボンちゃんが真っ直ぐにこちらを見ています。
正確には私の譜面台の、すこし横あたりを、じっと。
リボンちゃんが練習中にぼーっとすることなど珍しいですから、今の出来事と重ねざるを得ません。
私は譜面台をいじっていましたので、ごめんうるさかった?とリボンちゃんへの謝罪を言い切る前に、彼女が早口で言いました。
「この教室キモい」
いつになく、低い声で。
それは私も感じていることでした。
この譜面台の足にできた傷。。。これは多分。。。。。

「全体練習まであと20分くらいでしょ、いいじゃん音楽室戻ろ。三年いないし人少ないし、ちょっとくらい早く戻ってもいいでしょ」
リボンちゃんは本気で嫌がっているようでした。
普段黙々と練習するリボンちゃんに言われては、同意するしかありません。
他の3人も、、異変を感じて練習をやめていたので、みんなで音楽室へ戻ることにしました。
リボンちゃんは、そそくさと自分の持ち物をまとめると、速足で一番に準備室を出て行きました。
それを追って私も出ます。
慣例で使った教室の、、、?後片付けをすることになっている一年と、多分状況を分かっておらずゆったりしてるポニテちゃんを残して。

音楽室までの廊下、スタスタと歩いて行ってしまうリボンちゃんに走って追いついた私はすぐに切り出しました。
「あの準備室なんだろうね」
「知らない」
リボンちゃんは普段から素っ気ない子です。可愛いんですけどね。
「私の譜面台さ、」
「見た。ナンカが押さえ付けてた」

一瞬で鳥肌が立ちました。
リボンちゃんは淡々とした口調で続けます。
「はっきりは見えなかったけど。黒い影みたいなのが」
音楽室の目の前まで来て、リボンちゃんは立ち止まります。
それに習って私も止まります。
体が震えていました。
何も言えない私にリボンちゃんは冷静に続けます。
「そいつがその譜面台の上に体乗り出すみたいにして押さえつけてた。ノン(私のあだ名です)は気づいてなかったみたいだけど、結構長い間。多分五分とか」
たたんで左脇に抱えていたその譜面台が気持ち悪くて、大きくゾワっと身震いしました。
そうです。あの譜面台の足にできた傷は、傷は、
「だからその重さに耐えれなくなって、それ、縮んだんだと思う」
無理矢理力をかけてネジを緩めずにスライドしようとしたときにできた傷。

「その黒いやつは」
私がなんとか絞り出した疑問にリボンちゃんは初めて言葉を詰まらせます。
「明日からは元の教室使おう」
「ちょっと置いてかないでよ!」
何故それには答えないのか。
何故何故何故何故何故なのか。
まだそいつはいたのか。どこにいたのか。
軽くパニックになりそうな私を、ポニテちゃんの明るい声が呼び戻します。
ポニテちゃんはやはり事の顛末が分かっていないようで、深刻な顔で立ち止まる私たち二人を呑気な顔で見ています。
話した方がいいのか、という意味を込めてリボンちゃんの目をじっと見ると、リボンちゃんはあっさりと「立ちっぱなし疲れただけ、次からはいつものトコだね」となんでもないような顔で言い、そのまま音楽室に入って行ってしまいました。
「椅子くらい余ってるの持ってきておいとけばー?」とポニテちゃんはリボンちゃんに続いて行きます。
置いていかれたくなくて、私も急いで二人の後を追います。
音楽室から聞こえるパーカッションの練習の音だけが救いでした。
音楽室に入って一番最初にしたことは、もちろん譜面台を別のものと変えることです。。。

それからすこしして、徐々に音楽室に他のパートの子達が戻り始めます。
が、一向にトランペットの一年生が戻ってきません。
他のパートよりもずっと早く練習を切り上げたし、教室の片付けといっても窓閉め確認や忘れ物チェック程度のことです。
こんなに遅くなるわけがないし、部活中に何か違うことをし始める不真面目なふたりでもないので、さっきのことも重なり、私は心配で仕方なくなってきます。
リボンちゃんは他の楽器の子と合わせ練習をしていたので、隣にいたポニテちゃんに「一年遅くない?」と話しかけます。
ポニテちゃんは音楽室をさっと見回すと、「たしかに。私見てくるよ!トイレ行くついでに」

正直、助かったと思いました。
だれかと一緒に数学準備室へ一年を迎えに行くことを覚悟していましたが、彼女一人で行ってくれるならそうして欲しいのです。
もうしばらくあの教室には入りたくありません。。。
彼女一人に行かせることに罪悪感もありましたが、ポニテちゃんはどうやら何も感じていないようですし、きっと大丈夫でしょう。
「ごめん。お願いね」
ポニテちゃんは小走りで音楽室を出て行きました。
ホッとした私でしたが、それから数分もたたないうちに音楽室の内線電話が鳴りました。
新顧問は隣の音楽準備室で使っていない楽器のクリーニングをしていましたので、副パートリーダーの私が電話に出ました。
電話の向こうでは、誰かが話しているような声が聞こえます。
でもなんだか遠くて、ノイズも入っているし、音楽室内ではいろんな楽器の音が響いているしでよく聞こえません。
「もしもし?」
呼びかけると一瞬だけポニテちゃんの声がはっきり聞こえました。
多分数学準備室で何かあって、音楽室にかけてきたんだろうと思いました。
とにかくよく聞こえないので、「行くからまってて」とだけいって電話を切ると、リボンちゃんを呼んでポニテちゃんから電話があったことを話しました。
「電話って…」
リボンちゃんはすこし不可解な顔をしていましたが、このときその理由は私にはわかりませんでした。

数学準備室になんて行きたくないけれど、副パートリーダーとして行かないわけに行きません。
しかし流石に怖いし、電話があったということは緊急事態かもしれませんから、新顧問に言って一緒に行ってもらうことにしました。
「電話かかってきてました?」
新顧問にも電話について突っ込まれましたが、今はそんなこと重要じゃありません。
急いで数学準備室に行くと、教室後方に備え付けのロッカーの前で、3人が固まっていました。
ポニテちゃんは息を切らした私たちと新顧問を見て、「今呼びに行こうと思ってた」と言いました。
「え、でもさっきポニテちゃんが電話‥」
言いかけるとリボンちゃんが私の制服の端を引っ張ります。
促されて視線をやった先は、教室備え付きの電話機・・・が、そこに掛かっていたであろう、壁の白い跡。。。。。。
この使われていない教室からは、電話はとっくに取り外されていたのです。

じゃあ、さっきの電話はーーー。

しまった、と思いました。
私は呼ばれたんだ。呼び込まれたんだ。
まんまと、ここに、なにものかによって。
だからだ。だから電話がかかってきた時、電話に一番近いフルートの二年生がだれも反応しなかったんだ。
フルートの二年生は5人もいるのに。
だからだ。だから電話中だれも練習をやめなかったんだ。
普段なら電話が掛かってくればみんな音を出すのをやめるはずなのに。
あの電話の音は、私にしか聞こえていなかった。
多分、きっとーーー。

腰が抜けそうになりました。
新顧問が動けない私とリボンちゃんの間を縫って、3人の覗くロッカーに近寄ります。
「何かありましたか?」
ロッカーを覗いた瞬間、新顧問がピタッと静止します。
何があるのか、気にはなるけど見たくありません。
それに、きっと何かが、今も、この教室の中に。。。。。。
リボンちゃんもロッカーに近寄ります。
3人と新顧問を押しのけてロッカーの中を確認すると、たじろぐ様子もなくバタンとロッカーを閉めました。
その音で硬直がとけた私は、「何があったの?」と恐る恐る聞きました。
リボンちゃんは「とりあえず音楽室戻ろう。もう全体練習の時間」とだけ言うと、また一人スタスタと教室を出て行きました。
すこしの気味の悪い沈黙の後、新顧問が「他の先生に聞いておきます。あまり話を広めないようにして下さい」と言いました。
普段明るいポニテちゃんが、びっくりするほど元気のない返事をしたのを聞いて、ロッカーの中にはとんでもないものがあったのだろうと推測しました。
私はそれ以上何も聞けませんでした。

新顧問と音楽室に戻ると、リボンちゃんがいつものすまし顔で楽器を吹いていました。
おかしな体験をした私たちトランペットパートとロッカーの中身を見た新顧問以外は当然、変わった様子もなく普段どおりです。
全体練習が始まり、楽譜と指揮に追われているうちにだんだんと平常心が戻ってきました。
部活が終わる頃には大きくなりっぱなしだった鼓動も落ち着いていました。

帰るまでにさっきの面子と話はしましたが、数学準備室でのことには誰も触れようとはしませんでした。
当然次の日からはいつも通りパート練習に二階の一年生の教室を使いました。
あの傷のついた譜面台も、譜面台置き場の故障しているものが集まって置いてある端の方に移動させておきました。
2日後には修学旅行を終えた三年が部活に帰ってきて、とても安心したのを覚えています。


またそれから一週間くらいたった日。
部活終わりにリボンちゃんに引っ張られ、2年の教室に連れていかれました。
「来て」と言ったっきり無言で歩き始めた彼女を見て、私は彼女の話の中身をだいたい察していました。
彼女はいつも通りの淡々とした口調で話し始めました。
「最近ずっと三浦先生のとこに通ってた」

リボンちゃんとは同じクラスですが、そういえば彼女は最近休み時間のたびにどこかへ行っていました。
普段席で本を読むか、私のところにおしゃべりしにくるので、何をしているのか気になってはいました。
「あの後すぐ三浦先生に聞いたの。準備室のこと。三浦先生が知ってるのかはわかんなかったけど、翌日すぐ数学の授業あったしちょうどいいから」
「三浦先生は何も教えてくれなかったけど、反応が普通じゃなかった。だからなんか知ってると思った」
リボンちゃんの意外な行動力にすこし感心しました。
「とりあえず毎日行った。どうしても知りたくて。あのロッカーに貼ってあったお札の意味を知りたくて」

ロッカーの中を私はここで初めて知りました。
後日聞く勇気はなかったものの、あれじゃないかこれじゃないかと巡らせた予想の多分一番か二番目には出ていたものです。
「今日やっと、三浦先生が折れてくれた。ポニテ連れてったら、割とあっさり」
ポニテちゃんまで。
なんだか私一人置いて行かれたような気持ちでした。
「ポニテちゃんは成績いいから。。」
見た目によらず学年トップ10に常に入っている優等生の彼女にまで真剣に迫られては、三浦先生も困ったことでしょう。

リ「6年前まであの教室、普通に2年5組だったんだって」
リ「でも使えなくなったから、元々の1組の隣にあった生徒指導室を改装してそこを1組にして全部ずらしたんだって」
私「使えなくなった?」
リ「そ、あたしが見たあの黒いのは、6年前の生徒たちが呼んじゃったモノ」
リ「コックリさんみたいなのをやったらしい。呼んだら帰ってもらわなきゃいけないのに、帰らせ方わかんなくて、あそこに住み着いちゃったんだって」
私「そんな話・・・」
リ「信じられないよね、普通なら。こんなありがちな話。でもあたしは信じるよ。見たから」

リボンちゃんの目には迷いがなくて、脅かされている風でもなくて、その黒いナニカも、ロッカーの中身も見ていないのに、一人怯えていた自分が小さく思えました。

リ「その後あの教室で私たちが見たような変なことが続いて問題になって、教室はいっとき立ち入り禁止になったらしいのね」
リ「だけど立ち入り禁止ーなんて大々的にしちゃったら逆に何があるんだって何とかして入ろうとするバカが出るわけじゃん」
リ「だからその時の先生たちみんなで相談して、一番恐れられてて、当時まだ転任して来たばかりだった三浦先生の準備室になったんだって」
リ「先生って絶対何年かいたら転任させられるから、新しい先生じゃないといけなかったみたい。変にいわくあります感出して立ち入り禁止にするより、開放しておく方が誰も気にしないし」
リ「って考えると、三浦先生って玄関先にある魔除けの仮面に顔似てるよねw」

三浦先生の怒り顔を思い出して、私も少し笑いました。
リボンちゃんはすぐ真面目な表現に戻り、それでね、と話を続けます。

リ「しずかくんたちにお願いしようと思ってるの。私たちが卒業した後も、あの教室に誰も入らないように」
私「三浦先生の準備室である限りは大丈夫じゃない?」
リ「先生来年で7年目だから。なんか7年以上おんなじ学校にいると高確率で転任させられるんだって」
私「そっか。また怖い先生が代わりに入ってくるといいけど。。」
リ「それ、生徒の私たちが願うのおかしいけどねw」

話し終えたリボンちゃんはすこしスッキリした表情に思えました。

その後ポニテちゃんを加えた私たちは、後輩のふたりに話をし、この話をむやみに広めないこととを誓い合いました。
そしてあの数学準備室に誰かが興味を持ったら、何かしらの方法であそこに長居するのを防ぐよう動くことも決めました。
どうやってあの教室に興味を持つ生徒を察知するのか、何をしてその行動を止めるのか、わからないことだらけですが決意だけはありました。

その後、運良く?転任を逃れた三浦先生の鉄壁の守りのおかげか、数学準備室で何か起こるということもなく、私たちは卒業しました。
卒業後、ポニテちゃんとリボンちゃんとは別々の高校に進みましたが、リボンちゃんからは年に2度ほど連絡が絶えずありました。


今年、20歳の誕生日を迎えた私にリボンちゃんからそっちに行くから久々に会おうよと連絡がありました。
リボンちゃんは地元を離れて関西の大学に通っており、千葉まで来るとなると大変です。
夏休み中か成人式の時でいいのに、と言いましたが、どうしてもお祝いしたいと言ってくれたので、彼女に甘えてささやかな誕生日パーティーを開いてもらいました。
学校のこと、将来のこと、うざいバイト先の先輩のこと、恋愛のこと。
リボンちゃんは私の家に泊まる予定だったのですが遅くまで色々話しているうちに楽しい時間は過ぎて、私はいつのまにか寝てしまっていたようでした。
起きると昼の15時を回っていて、リボンちゃんの荷物はありませんでした。
彼女は今日の夜バイトがあると言っていましたから、帰らざるを得なかったのでしょう。
あー見送れなかった。。とすこし落胆しながら、お詫びのラインでもしようかと携帯を開きました。
するとリボンちゃんからラインが入っていました。

“ノン、誕生日おめでとう。昨日今日は本当に楽しかった。

中略

あたし一個言ってないことあった。昔中学校の時、数学準備室で変なことあったでしょ。あたし黒い影見たってノンに言った。
あの影ちょっとの間ノンにずっと着いてた。
すぐいなくなったけど。
で黒い影について三浦先生に聞いた。でもそういう話は今までなかったって言うんだよね。
見たって言う他の生徒たちの話では体高の低いナニカだっていうし、コックリさんで呼んじゃったくらいだから狐みたいな動物霊だと先生は思ってたって。
ちょっと調べたり考えたりしたんだけど、動物霊が電話なんて使う?多分使わないよね。
だからあたしのみたアレは、別の何かかもしれない。
言った方がいいのかすごい迷ったんだけど、下手に言って怖がらせてもかわいそうだから。。
でもノンに何かあったらあの時言わなかったあたしの責任かもしれないって思ったから、ノンのことはいつでも気にかけてた。

ノンが20歳の誕生日、無事に迎えられて良かった。
大切な日にこんな気持ち悪いこと言ってごめん。
でもあたしはもう遠いし、ノンに何かあってもすぐに行ってあげられない。
だからこれからノンに何かあってもすぐ自分で対処法を考えられるように言わなきゃと思ったの。

なんかまとまらないけど、夏休みもそっち帰るから、また遊ぼうね。”


どうしてでしょう。
私はまだ彼女が何かを隠している気がしてなりません。

結局事実はラインで言うのに、私の誕生日、翌日バイトがあるにもかかわらず明け方の夜行バスで10時間近くかけてやってきた彼女がそうまでして見たかったのは本当に久々に会う友達の顔だけだったのでしょうか?
それとも言えなかっただけで、本当は直接言おうとしていたのでしょうか。
私が考えすぎなだけならいいのですが。
ラインでは当たり障りのない返事をしました。
この夏休み、お盆に彼女は帰省します。
私はきっと聞くでしょう。


その黒い影は、本当に今はもう、見えていないのかと。



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