【友人は寺の孫①】深夜に友人から着信「線路にばあさんが…」→ゾッとする恐ろしい事態に巻き込まれた

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353:
俺が結婚して地方に越したからあまり会ってはいないんだけど、時折連絡を取り合う仲の友人がいる。
そいつをAと呼ぶことにする。

Aは、ごくごく普通の音ではあるけど、書けば難読って感じの名前の持ち主だった。
なんでも、寺の住職を母方の祖父に持っていたらしく、娘である母が継がない代わりに、孫を一人養子として寄越す約束になってたらしい。
読み方を変えればお坊さんとしてやってけるように、そういう名前になったんじゃないかと本人は言っていた。

Aは長男ではなかったけど、誰を貰うかわからないからと、全員その祖父が名付け親になったらしく、兄弟もみんな読みを変えられるようになってるってきいたし、実際教えてもらっても読み方が全くわからなかった。

その祖父の逸話もあるんだが、とりあえず今回はAのことと、Aに俺が初めて巻き込まれたと自覚した出来事について話したいと思う。

 

354:
知り合った頃、寺の孫だときいて、興味本位で、修行したり、お祓いとか出来たりすんの?と仲間内での雑談中に本人に確認したことがある。
その時、本人は苦笑いで「そもそも幽霊とか霊感とかあんまり信じてないんだよな」と、どこ吹く風で、
「日本には妖怪とかが多いけど、昔から理解出来ないものを、ソウイウモノなんだ、と納得させてきたってのはあると思う。今、妖怪が減ったのは、科学とかで証明されて、不可解な現象じゃなくなったからじゃないか?」みたいな、存外真っ当な反応だったと思う。

ちなみにこれは、いつ本人に確認しても同じようなことを返してくるから、多分流れとしては実際にこんな感じだったはず。
俺はビビリではあるが、オカルト的な話に興味のある年頃だったから、拍子抜けというか、がっかりした覚えがある。
「ただ、まあ、起こっちゃったもんは起こっちゃったってことで、仕方ないよね。事実は覆せないから、そういうもんなんだなあ、って思うかな」とは言っていたけど。

 

355:
けど、信じてないとか言うわりに、寛容というか、自称霊感持ちとかが交通事故現場とかに怯えてるのを、すごいね、俺そういうのわかんないから、と、別に強く否定することもない感じの態度でいた。
本人曰く、その人がそう思ったならそうなんじゃない?らしい。
自分にはそういった特殊能力は備わっていないから、それが事実なのか判断することが出来ないというのが理由らしいので、シュレディンガーの猫みたいなもんなんだろう。 

そして、Aだけが幽霊を見たとか、気配を感じたとか、声を聞いたみたいな話も全くなかった。
逆を言えば、Aが経験する怪奇現象は、誰でも、たとえ複数人その場にいたとしても発生するような…
それこそかまってちゃんの作り話とか、気のせいで済ませられるようなもんじゃないってことなんだけど。

そしてよりにもよってAは、基本的に『自分一人で経験したってなると、気のせいの可能性があるじゃん。証拠もないしさ』と、確実にその場に居合わせた他の人に事実確認を取れてしまうような出来事しか話さないのだ。

そして『自分だけが経験した!みたいな特別な出来事ではない』という認識からなのか「こないだアイス食べたら当たり引いた」くらいの感覚で、ただの、ちょっと変わった雑談として日常会話にブッ込んでくるので、Aに対して「なんか最近変わったこととかあった?」は、今となっては俺的に禁句である。

 

356:
で、まあ、知り合って5年くらい経った頃、今から10年くらい前になるけど、
確か深夜2時過ぎくらいだったと思う。 
その頃俺はもう地元を離れていて、結婚もして、ちょうど1歳になったばかりの子供もいた。 
翌日が休みということもあって、ネサフをしながら夜更かししてたんだよな。

そしたら携帯が鳴った。
Aからの着信だった。
普段はメールでのやり取りが多いやつで、たまに変な時間に突然電話がかかってくることはあるけど、Aはあんまり電話をするタイプではない。
まあ子供も寝た後だしと、そっと寝室から出て通話ボタンを押した。

『久し振り』
「国間違えてんのかってくらい常識と時差あるけど正気か?」
『あー、うーん、申し訳ないんだけどちょっと電話ずっと繋いでてくれない?あと、通話切れたら泣いちゃうから、充電器差しといてね』
「お前どんだけ俺のこと好きなんだよ。で?なんかあった?」
『なんかあったというか、あってるというかー』

みたいな、なんとなく奇妙な、煮え切らないような出だしだったと思う。
まあ元々、Aは特に要件なく電話をしてくることが大半なので、その時はあまり気にならなかった。 
耳に当てた携帯からはやけにノイズのような、風の音のような、人混みのような、とにかく雑音がガサガサと混じっていて、正直聞き取りにくかった。

 

357:
「お前外から電話してんの?」
『そうそう、残業で終バス逃してさ』
「タクシー使えよ」
『いやー、タクシーはちょっとなあ』

みたいな、普通の会話が始まって、こりゃ仕事の愚痴かなと思ってたんだよな。
こんな時間まで残業してたらそりゃ、誰かに話を聞いてもらいたくもなるだろうなって。
冗談だろうが電話切れたら泣いちゃうらしいし、相当メンタルにきてるのかもしれないなって。
なんで俺?とも思ったけど、逆に近くにいないからこそ話しやすいとかもあるのかなとか。

とはいっても、まるで台風の中で通話をしているみたいな雑音が絶えず続いてて、雑踏に紛れながら歩いてでもいるのか、周囲の声もこっちに届いているような状態だった。
正直、Aの声がたまに途切れるくらいのうるささで、多少イラついて、まあ、文句言ったんだよな。

「つーか後ろ、うるさいんだけど」
『あ?本当?そりゃ困ったな』
「電話すんなら人通り少ないとこ歩けよ」
『なんか言ってんの、聴こえてたりするんだ?』
「うん、お前の声聞き取りにくい」
『へえー…ブツブツ言ってんのはわかるんだけど、俺それ聞き取れてなくてさ』
「おう」

『いまね、人通り全然ないんだよね』 
「は?」 
 
どう考えても、渋谷のスクランブル交差点から掛けていると言われても納得するくらいうるさいのに、こいつは何を言っているんだと思いながら改めて耳をそばだてて、背筋が凍った。 
ブツブツとノイズの中で途切れ途切れに聞こえるのは、呻くような嗄れた声で、それが幾重にも重なって、Aの後ろからまるで囁くように通話越しにこちらに届いている。
そして、台風なんか、今日本に来てない。
風もなく穏やかな陽気だった。

『なんかねー、ばーさんがついてきちゃってんだよね』

写メ撮れるかわかんないけどいる?と聞かれて、Aがそんなことを言うなんて、これはマジなのではと、丁重にお断りした。

 

358:
なんでも、出勤の際に、バスに乗りながら線路の遮断機を超えた時に、ばーさんが立ち尽くしているのを目撃していたらしい。
そのことを覚えていたのは、そのばーさんがパジャマ姿だったことと、首からだらりと、頭が垂れ下がるように異様なほど俯いていたからで、
その時は、徘徊してるなら近くに交番もあるからそのうち誰かがおまわりさんに預けてくれるだろうと思っていたんだそうだ。

そして残業をして、まんまと終バスを逃して、徒歩1時間半の道のりを何故か歩こうという気になり、その帰り道にその線路で同じばーさんがいることに気付いたと。
Aは、別に人通りがなかったわけではないし、なんで誰も気に留めないのかなと思いながら、そのまま通り過ぎた。

しかし、しばらく歩いていて、なんか耳元で声が聴こえるという違和感と、そういえば後ろから足音が聞こえるなと、振り向いて初めて、そのばーさんが自分の後ろをついてきてしまっていることに気付いたのだという。
こりゃ困ったなあと交番を覗いても、ちょうどパトロール中で不在。

Aは別に悪いやつではないのだが、残業で疲れている状態で、親身になって徘徊老人を保護してあげようという気にはならなかったらしい。
しかし、おかげさまでそいつが異常なことに気付けた。
ばーさんはゆっくり歩いているように見えるが、ちょっと走ってみても距離は離れない。
そのくせ、立ち止まると距離が縮まる。
遠いのか近いのかよく分からないが、呻き声みたいなものを発していて、わりとイラっとする。
厄介なもん拾って来たなあと、試しに自宅や他の友人に片っ端から電話を掛けてみたが、誰とも繋がらず、唯一繋がったのが俺だったらしい。

 

359:
『このまま家に帰って、自宅がバレるのも困るからさ』
「お前はなんで俺に掛けちゃったの…?」
『距離とかやっぱ関係あんのかなって思って』

Aいわく、生きている人間は固体、幽霊は液体、成仏は気体のような概念らしい。
生きてる人間は固体だから、ハンマーのような固体でぶん殴ったら傷が付く。
幽霊は液体だから、ハンマーは効かないが、水で流れてったり、水の溜まるところにくっついてしまってうっかり動けなくなって淀んでしまったりする。
火や煙、ファブ◯ーズが幽霊に効くのは、物理的に蒸発するというか、気化させるんじゃないかとのこと。

けど、生きてる人間は、いわば氷のようなもので、外側に水分のようなものが滲むようにして付いている。
だし、実際に肉体の7割は水分である。
だから、液体である幽霊がくっついてしまうのではないか、というのがAの考察である。

ちなみに呪いとかそういうのは、油性マジックとか油性絵の具とか醤油だとかそういったものに近く、
お祓いできるかどうかは、その神職がハイターを得意とするのかアルコールを得意とするのかなどによっての相性問題なのではないかと、自己見解を展開してくれた。

 

360:
そして、液体は電波に影響を及ぼすらしい。
水が通電するのと同じ感じ、と説明をされて、納得はしたが、そんなことは別に知りたくはなかったのでその時点でもう、電話に出たことをめちゃくちゃ後悔してた。
純水の場合は絶縁することがあるのと同様に、なんの純度かは分からないが、
純度が高いと阻害されるし、逆に不純であれば電波に乗って散るのか、電話がまともに通じた時点で解消されることがあったり。
そもそも純度なのか密度なのかわからないが、起点付近及び、やばい時は電話がおかしくなることも多いのだと。

だからAは電話をしたのだと。

しかも実は今までにも、俺は解消のために電話を掛けられていたことがあったことも判明した。
過去の変な時間の、内容のない会話で終わる着信は、それが理由だったのだ。
知らない間に巻き込んできてるとかマジこいつボコすと決心した。

そして今回は、絶縁するタイプ。
要するに、Aの理論でいえば大分やばい。
ちなみにAは携帯を二台持ちしていたのだが、電話会社によって周波数の相性があるのか、通じる回線と通じない回線が発生することがあるというのを経験として知っており、対策の一環としてわざわざ所持しているということをその時初めて知った。

また、Aは愛煙家だが、煙を巻くを物理的に実行すべく吸い始めたらしい。
なお、他と比較すると、確率的に一番こういう干渉を受けにくいのはPHSで、基本料金も安いからオススメ!とのことだった。
余談だが、そのダイマを受け、俺はマジでPHSへの乗り換えを検討した。

 

361:
『で…?距離ってのは結局なに?』
「なんか基本的にね、あんまり広範囲動けないっぽいんだよね」
『地縛霊的な?』
「まあそんな感じ。やばい奴ほど、起点である中心から広い範囲で活動が可能。
でも、大体どんなやつでも限界距離を超えると、スタート地点にリスポーンすんの」
「成る程?」
『多分こいつの起点はあの線路の遮断機だと思うんだよね』

起点が土地ではなく『人間』や『物』であることもあるようだが、Aの経験的には、その場合はあまり他に干渉してくることはないらしい。
『液体』が動くモノにしがみついてるのはやはりしんどいのか、振り落とされないように必死なのか、
なんにせよ余裕がそこまでないっぽいんだよね、と、なんだか間抜けな表現をされた。

確かに、同じように水浸しにしても、置きっ放しのタオルより、持ち運んで僅かにでも重力とか遠心力とかを掛けた方が水分はそこそこ落とせる。
『液体』は起点を元あった場所から、任意か不可抗力か、モノに移し替えることもあるようだが、あくまで乗り物感覚であって、わりとすぐその『乗り物』がよく留まる『土地』に起点を移し替えるらしい。

今回は多分、Aに乗っかって来てはいないというか、乗っかるためにおそらく追いかけて来ているんじゃないかと。
くっついてないし、流石に家に帰れないとなるとシャワーが浴びれないので、下水に流すことが出来ない。
そもそも流水で落とせる相手かというと、電波状況的には負けの色が強い博打ものレベルと推測されていた。

だから歩き続けて、ばーさんの限界距離を越えようとしているのだと、Aは平然とのたまった。

 

363:
『で、お前以外で俺が電話かけようとしてた奴らは多分全員、ばーさんの影響範囲内なんだと思うんだよ。自宅とか、あと地元の奴らばっかりだし』
だから、阻害されるのではないかと。

香りが発せられるかのように、起点を中心として影響を及ぼせる範囲があって、その縄張り内はわりと自由にやれるんじゃないかというのがAの見解である。
霊感というものが存在するのであれば、その香りみたいなもんに気付ける能力なんじゃないかな、とも言っていた。
そして、実はちょいちょいこういう時に電話が通じる相手であるらしい俺に対して、Aは、新幹線で3時間ほどかかる距離だからなのではという検討を付けていた。
ただし確証はもちろんないので、検証込みで俺を巻き込んでいるらしい。

 

364:
『でね、ノイズの多さとかでヤバさとかが判断つくから、通話し続けて欲しいんだよね』
「……ちなみに歴代でどんくらいやばいの」
『随一!いやぁ、鮮度が良いね!』
「魚じゃねーんだぞ!呑気か!」
『鮮度が良いから純度が高いんじゃねーかな!』

ふっざけんなよと返しながら、思い返して絶句した。
今ままでAが、ここまで詳しく持論を語ったりしたことはなかった。
めんどくせえからそろそろ電話切るぞ、で俺が通話を切るのは、自分たちのお決まりのパターンだ。
そもそも、通話の時点で解消されるパターンであれば、今までのことを思い返しても
「お前の声が聴きたくなった」とか適当な理由でAが話し始めるため、そんな長時間会話はしない。
Aは始終のんびりとしたテンションで会話を続けてはいるが、内心では相当切羽詰まっているのかもしれない。
俺がヤバさを理解しないと、いつ俺が電話を切ってしまうかわからないから。
だから、Aは電話を切られないよう、これまで話さなかったことまで話したのではないか。
そして、充電しろとまで言われたのは初めてだ。
そう考えて、背筋にゾッと寒気が走った。

「……いまどんくらい歩き続けてんの…」
『自宅には近寄らないようにはしたけど、もう通り過ぎた』

 

365:
要するにAは、ばーさんに付きまとわれながら、この深夜に1時間半以上の距離を歩いて移動した上で、ようやく通じた俺と電話をしている。

『まあ家に電話通じない時点で、限界点突破出来ないだろうなってのは推測出来てたからねー』

Aの後ろからはやはりというか、絶えずなんか呻き声みたいのが聴こえるし、
家族をこんな夜中に起こすわけにもいかない自分は、リビングでたった一人でそれを聞かなきゃならない。
こんな時に限って子供が夜泣きをしないのだから不思議だ。
普段なら、もう無理だ!とビビってこんな電話は切っている。
けれど今、Aが無事でいられるための命綱は、自分しかいないのだ。
直接助けられはしなくとも、少なくとも、通話のノイズで危険度の判断を付けられるという、危機察知レーダーとして。

 

366:
「人通り多いとことか、明るいとことか行けばどうにかなんない?」
『いやそれがさ、無理だったんだよね』

そもそも件の線路自体がそこそこ人通りがあること、更にコンビニにも入ってみたことも報告してくれた。
コンビニに入った時は、ばーさんが自動ドアの手前で立ち止まっていたため、お?やったか?と思ったらしいが、
お菓子を物色していたときに、自分の視界の端に突如ばーさんのパジャマの紫色がチラつき、しかも距離的に自分のわりと真横あたりに立っているのではという状態だったため、付いてきやがった、と慌ててコンビニを後にしたとのことである。

他の人の反応で何か気になることはなかったから、おまわりさんを頼っても、ばーさんは認識されないどころか、おまわりさんと会話するために立ち止まれば、追いつかれる危険性すらあるとAは判断しているらしい。

人がいるとこなら平気とか、明るいとこなら平気!みたいな根拠のない安心感を奪う絶妙な検証結果は、ビビリな俺に的確な絶望を与えた。
そして、こうなりゃ持久戦だ!と常人には理解出来ない戦いに持ち込むことにして、今に至るらしい。

 

367:
「自分で祓ったりとか出来ないの?」
『無理無理。自分の背中にチョークの粉掛かってるのを叩き落とせるかっつったら無理でしょ』
「確かに無理だわ」
『その点シャワーはいいぞ!手が届かないところまで綺麗に流してしてくれるからな』
「方法が物理的すぎるんだよなあ……破ァ!とかやれねーのかよ」
『そもそも信じてないしな、幽霊とかそういうの』
「ならいま追いかけてきてんのはなんなんだよ」
『まあ、起こっちゃったもんは仕方ないよね』

そんなやりとりをダラダラと30分ほど続け、もはや俺も雑音にも慣れた頃、
突如、うわ、というAの声を皮切りにして、今までの比でない程に大きなノイズが数秒に渡って聴こえた後に、通話が切れた。

 

368:
あまりのことに慌てて折り返しの電話をするが、全く繋がらない。
Aの持つ二台のどちらに掛けても、結果は同じだった。
お掛けになった電話は現在電波の届かないところにあるか電源が切れています、の機械音声に、逆にノイズが入らないことが怖かった。

それまで普通に話をしていたのに、まさか、と思って愕然とした。
充電が切れたならまだいいが、電話を頼みの綱としているAが充電バッテリーを持ち歩かないわけもない。
不安になってメールを送ってみると、すぐさま受信の通知が鳴った。
ホッとしたのもつかの間、メールを確認して鳥肌がたった。
英数字の羅列はAの携帯のもので間違いはないはずなのに、そんなアドレスは存在しないとでもいうかのように、送った分だけのエラーメールが自分の受信フォルダを賑やかしていく。

その時点で既に深夜3時半を回っていた。
Aがどれほど歩いたのかはわからない。
けれど、直線で進まないと効率が悪い、と、土地勘のない、知らない道すらも歩き続けていたはずだった。

実はそれが、ナニカに誘導されていたものだったら?

そんな嫌な予感で、指先が震えた。

 

369:
何故、Aは残業で疲れていたにも関わらず、1時間半ものあいだ歩き続けて帰宅するという選択肢をとったんだ?
職場と自宅の真ん中あたりにその起点があったとしたならば、自宅付近を通過してしばらく移動してなお振り払えない程の影響範囲を持つそいつが、Aの職場すらも縄張りとして動ける可能性は?
Aはなんて言ってた?
生きている人間は7割が液体だと、そして、そいつらは通電するのと同じように影響を与える、と言っていなかったか?

確か、人間の脳は、微弱な電流によって思考の伝達をするとされていなかっただろうか。

警察に連絡すれば迎えに行ってくれるだろうか、けれどなんて説明すればいい?そもそもどこを歩いていたのかすら本人も把握できていなかったのに、俺がわかるわけもない。

 

370:
途方も無い不安にかられていた中、携帯が着信を知らせた。

Aだった。

怖がるよりも先に反射的に通話ボタンを押して耳に当てると、24時間営業のスーパーの鮮魚コーナーの曲が聴こえた。

『おつかれー!いやーお前のおかげで助かったわー。しっかしこの時間だとお惣菜コーナーも空っぽだなー』
「おっま…無事だったのか?」
『おー、限界点突破したっぽい』
「よかった……」

身体中の緊張が解け、ぐったりとテーブルに伏せながら、安堵の息をついた。
Aは相変わらずのんびりとしたテンションで、こちらが心配して震えていたのが馬鹿馬鹿しくなる程に朗らかだった。
あの異様なノイズは、恐らくは限界点を抜ける前の最後の悪あがきのようなものなんじゃないか、とのことである。

 

371:
『それまで、距離はあるのにずっと耳元でブツブツ言ってたのがさ、やけに鮮明になってきて、まあ内容聴き取れねーんだけど』
「うん」
『お前の声が完全に聴こえなくなったから、やべえと思って全力で走って、見つけたスーパーに駆け込んだんだよね』

10分ほどそこで夜食を物色しているが、例のパジャマの影も見えないので、リスポーンされたのだろうという無事の報告だった。
よく食欲が湧くな、とAのメンタルの強さに呆れながら、電話越しに聴こえる店員さんのレジ通しの声の普通さに、心底安堵した。

『だいぶ遠くまできちゃったからタクシーで帰るわ、おにぎり買えたし』
「大丈夫なのかよ、家に帰って」
『ここからならどうせあの線路のところ通らないし、うちの場所バレてないだろうから問題ないね』

変なことに付き合わせてごめんな!じゃあまた!と元気よく切れた電話にほっと息をついて、麦茶を飲んでから携帯を見直した。
やはり受信フォルダはエラーメールの山だ。
しかし、Aから『件名:おやすみ 本文:ありがと』のメールが届いており、それに対して返信しても、今度はエラーメールは戻らなかった。

 

372:
これが、俺がAに巻き込まれたと自覚している初めての話です。

長々とすみません。
文章まとめるの苦手で……。
結局20連投もしてしまった……

気が向いたら、また、他にもA絡みのろくでもない出来事があるので投稿します。
 

 

 
397:
おもろかったよ
他にもまだ話持ってるみたいだから聞かせてくれ

 

398:
全部読んだよ。投稿サンクス
でも自分なら巻き添え食いたくないから、そいつからのは着拒する。

 

400:
ばあさんどうこうより、「お前の声が聴きたくなった」って電話して来るAがこえーよホモくせえよw 

 

406:
自分も追われた事あるから、友人の気持ちがわかるわ。
幸い連れと二人だったからパニックにならなかったけど。

 

417:
面白かったよ
ここの部分はなるほど!と思った

Aいわく、生きている人間は固体、幽霊は液体、成仏は気体のような概念らしい。

また書き込みしてほしいです

 

 
399:
面白かったー
難しい表現もあったけど全部一気に読んでしまった
いま夜中だからスゲー怖いw

 



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