彼女の部屋にいる知らない女

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引っ越したばかりの彼女の新しい部屋で、そこかしこに感じる女の影。
その理由とは───



 ちょっと長いけど。もう十年以上前の話。当時付き合っていた彼女が一人暮らしをすることになって、引っ越し作業を手伝う事にした。
 夜暗い中、彼女にアパートの場所を聞いて徒歩で向かう事に。この辺かな?って近くまで行って電話しながら場所を確認していた。

「今近くまで来てると思うんだけどどこ?」
「そこから見える木造のアパートだよ。2階建ての。そっちから見るとそのアパートの一番左の窓が部屋だよ。」
「電気ついてないけど居るの?」
「居るよ。ちがうアパート見てるんじゃない?」

 はっきりとは覚えてないけど木造2階建ての各階3部屋づつだったと思う。そのアパートの裏手には空地というか、もう使っていない田んぼがありその田んぼを挟んでアパートを見ていた。アパートまでの距離は2,30メートルくらい。



 ここだよなーと首を傾げながら見ても、彼女の言った部屋の窓には電気がついておらず、その部屋の下の階だけに電気がついていた。窓があって障子が付いてる感じの古いアパートで、ふと気付くとその障子に女性の人影がうつってた。体育座りで真上を見上げてる感じの髪の長い女性の影で お尻からつま先まで写っていてとっても姿勢のいい体育座りだった。
 全く動かないので人形か?とか思いながら暫くその影を見つつ歩いていたんだけど全く動かない。田んぼ沿いにぐるっと回りこまないといけないので、見ていた時間も5分とか10分とか結構長いと思う。
 でも全く動かなかった。



 何だろうな。と思いながらも道を進み、近辺まできて彼女に外に出て来てもらった。案内されるとやはりさっき見ていたアパートで合っていた。
 縦に3部屋繋がってる感じの部屋。2DK?玄関を入るとダイニングキッチンで、風呂、トイレ、キッチンがある。中央の部屋は窓がなく床の間のある和室。一番奥は窓があり押入れがある和室。壁の色が濃い緑っぽい抹茶色だったのを覚えてる。
 彼女が中央の部屋に居たのなら窓のある部屋に電気がついていなかったのも分かる。謎が一つ解けたところで荷ほどきやらを手伝った。



 部屋の中を案内してもらっている時に風呂場で彼女が気付いた。排水溝に長い髪がぐるぐると詰まっている。2人で気持ち悪がりながらもその髪を摘み上げて片づけた。

「掃除されてねぇのかよ」
「どうなんだろうね、台所の流しにも落ちてたんだよ」

 と彼女は言ってた。



 窓のある一番奥の部屋を見てみたら、ここに向かっている途中で見ていたように障子窓だった。そこで一つ疑問が。
 こういったアパートは大体同じような部屋の作りになっていると思うんだけど、障子窓は膝丈位の高さにあるので窓の前で体育座りをしても、胸から上位からしか影にならないのでは?と思った。
 まぁ手前にベッドとかを置いているのならあり得なくもないか。ベッドの上でテレビでも見ていたから動かなかったのかな。真上を見ているように見えたけど影だし見間違いか。と納得した。



 今思えば変だよなって事が結構あったんだけど、その時はそんなに気にしていなかった。彼女の部屋に来た時、線香のにおいがしてたり、何気ない話をしているときに急に俺から大量の鼻血が出たり。



 引っ越し終わってから暫く経った後でも、彼女がトイレで黒髪の長い髪を見つけたり部屋に敷いていた絨毯に落ちていたりって事が度々あった。2人とも髪を茶髪染めていたので真っ黒い髪は自分たちのではないとわかってた。彼女が女物のピアスだったか指輪を部屋の中で拾ったこともあった。俺が他の女を連れ込んでるとか言われたこともあるほど多かった。


 俺が風呂でシャワー浴びてると、風呂のくもり窓にうろうろとする人影があった。うろうろした後ドアをガチャガチャ。誰だろう。彼女が部屋の鍵でも忘れたのか。と思い窓を開けてみると誰も居ない。
 彼女に聞いてみたら隣のおばさんが時々余ったおかずとか持ってきてくれるらしいからその人じゃないかという事だったが、隣のおばさんがいきなりドアを開けようとするだろうか。



 彼女の高校時代の写真を眺めて居る時に、

「撮った時は気付かなかったんだけど何枚か変な写真があるんだよねー」

 と言いながら見せてきた写真があるんだが、それは俺から見れば明らかに心霊写真でした。3枚くらい変な写りの写真があって、全部赤い炎みたいなものが写ってる。
 一枚目は炎のような赤い靄のようなものが全体にうつっている。二枚目は左半分が赤くなっており、逆さにして見てみると正面を向いている女性の顔半分。三枚目は写真の左上から右下にかけて大きく赤く靄がかっており、口を大きく開けて上を向いている女性の横顔に見える。
 もうね、何で気付かねぇんだよって言うくらい俺には一目でわかったレベルの写真。



 ふと、初めてここに来た時に見た上を見上げていた女性の影と三枚目の写真の横顔が重なった。彼女は鈍感というか肝がすわっているというか度胸があるというか。とにかく全く気付いていなかった。あるいは気付いていないふりだったのかもしれない。俺が「これ、顔だぞ」って言っても「そうかなぁ?」とか言ってる感じ。



 ある日、何が原因だったか忘れたけど彼女とすげー大喧嘩をした。一番奥の窓のある部屋で長々と言い合いを続けて、時間は多分午前2時を過ぎてた。
 その時、いきなり部屋のポストがガタガタガタ!っと激しくなる音がした。十数秒くらい鳴ってたと思う。あまりに唐突だったもんで目を丸くしてたら次にカツカツカツとハイヒールでコンクリートの道を歩くような音がした。
「こんな深夜に誰のいたずらだよ」と思いふすまに手を掛けて出ていこうとすると、ふすまの向こう、中央の部屋でスタスタスタっとすり足であるき去るような音がした。ふたりして顔を見合わせて、聞いた?聞いた?って感じで目を合わせる。
 その時、なんか変なにおいがしてた。さっきまでの喧嘩とかどうでもよくなった。

 
 それで次の日、俺は当時よくつるんでた男友達をその家に呼んだ。怖くなったっていうのもあるかもだけどすげーことあった!って感じで見せびらかしたかったのかもしれない。友達が来た時間は結構遅かったと思う。

「あれ?」みたいな顔して振り返ったりしている。
「どうした?」
「今外で出迎えてくれてた?」
「いいや、部屋に居たよ」
「なんか白い服着た人が立ってたから作業着で出迎えてくれてるんだと思ったんだけど違ったのか。」

 当時俺は建設関係の作業員をしていたのだが、作業着は薄いグレーの作業着だったのでその格好で立っているように見え、近づくと居なかったらしい。



 こんなことが続いてさすがにこの部屋何かあったんじゃないかと調べてみた。
 数年前、田舎では滅多にない事件があった。射殺?刺殺?確か射殺って聞いた気がするんだけど、どこかからか移り住んできた女性が白昼堂々殺害されてしまったらしい。その女性が住んでいたのが今の彼女の部屋だったと。それを聞いた俺たちは部屋で線香を焚いて手を合わせた。
「そこに住んでいた」というのを誰から聞いたのか思い出せないんだけど、一時期地元では有名になった事件だったし本当にあった事件だと思う。十数年前の更に数年前だから20年近く前になるのかな。



 その後、俺と彼女は別れてしまってその部屋がどうなったかはわからない。彼女の方はその後地元の町を出て暮らしているそうです。俺は変な勘が身についてしまったのか時々変な目にあうようになりました。

おわり。



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