廃墟『豆腐』の地下室

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廃墟巡り。
廃れて真っ暗な建物内を歩くときの緊張感、高揚感、そして後ろめたさは他の何にも代えがたい。

投稿主が廃墟巡りの対象として選んだ場所は、白く四角い『豆腐』と呼ばれる建物。そこは本来「怖くない廃墟」であるはずなのだが───



 田舎暮らしの高校二年生です。私が中学一年生の時、私の周りでは『廃墟巡り』なるものが流行っていました。とは言っても実際巡っていた廃墟は三つしかありませんでしたが。 5~6人でグループを組んで、その三つの廃墟に入り込んでは動画を撮ったり中を荒らしたり、といった馬鹿な事をしていました。



 そんな中、私は友人二人と恒例の廃墟巡りに出かけました。
 話し合った結果、近場の一番怖くない『豆腐』と呼ばれる廃墟に行くことになりました。白くて四角くて豆腐みたいな形をしているのでそう呼ばれていました。



『豆腐』は山へ繋がる細長い道路にある二階建の建物でした。錆びた門を乗り越えて、周囲に生えている自分の腰ほどの草を掻き分け、一階の割れた窓から侵入しました。正面玄関は木の板が打ち付けられており固く閉ざされていたので。
『豆腐』は先程言ったように怖くない廃墟として認識されていました。豆腐のような形で普通の一戸建ての家の二倍程の大きさを持ち、家と言うよりも施設と言った方が正しいと思います。なので他の廃墟と違い、陽の光が窓からよく差し込み、昼ならば日光だけで中を探索できる程です。



 いつものように三人で荒れた室内を歩き回りスマホで動画を撮っていると、友人の一人が一階の廊下で地下室を発見しました。
 その頃、『豆腐』は既にかなりの人数が入り込んでおり、目新しい発見は期待できそうにありませんでした。
 私達は新しい発見に喜び、早速地下室に踏み入ることにしました。



 防火扉のような扉を開けると中は真っ暗でした。しかし、陽の光で辛うじて下に続く階段がある事に気がつきました。
 私達は扉を閉め、縦に並び、先頭がスマホで動画撮影をしながらライトで足元を照らし、後の二人が続きました。私は列の真ん中にいました。
 真っ暗な中、僅かな明かりを頼りに階段を下り続けました。当然ながら地下室の中は静かで天井から滴り落ちる水滴と私達の足音が響くだけです。私は暗闇の中、地下室がどこまで広がっているのかを把握できずにいました。



 それを不安に思っていた時、私は突然、強烈な寒気を感じました。身体中鳥肌が立ち、冷や汗が一気に噴き出ました。
 私は友人二人に『いかん、逃げよう逃げよう』と掠れた声で呼びかけ階段を登り始め、友人も『なんな?どした?』なんて言いながらも私の尋常ではないビビりっぷりに焦ったのか、三人で駆け足で扉まで行き、乱暴に扉を開け、地下室から廊下へ出ました。
 しかし、私は尚も、地下室に引きずり込まれるような錯覚と強烈な寒気を感じ続けていました。
 私はそのまま二人を連れて『豆腐』から脱出しました。あのまま『豆腐』に留まり続けるのはどうしても耐え難いことだったのです。



 その後『豆腐』から一番近い友人の家に逃げ帰りました。
 その時友人が『そうや、あの動画を観てみようや』と言いました。私はすっかり忘れていましたが、地下室で列の先頭にいた友人はスマホで動画を撮影していました。
 私は乗り気ではありませんでしたが友人二人は興味津々な様子だったので、動画を観てみました。



 地下室に入るところから動画は始まり、真っ暗な中、しばらく頼りないスマホの灯りが映り私達の足音と落ちる水滴の音が聴こえてきました。そして、私が『いかん、逃げよう逃げよう』と言うところのほんの二秒前に、不気味なノイズが入り込んでいました。
 文字で表すのは難しいのですが『ズシュッ!ズシュッ!』と何かを壁に擦り付けるような、とても不快で不気味な音でした。そのノイズがした約二秒後に、私が『いかん、逃げよう逃げよう』と言い、三人が地下室を出たところで動画は終了しました。



 撮影した友人は気味悪がりましたが動画は削除しませんでした。むしろ、他の友人にみせるネタができたと喜んですらいました。
 私はあのノイズの原因である何かを感じ取ったのか…あの地下室には何かがいるのではないか…あのまま階段を下り続けるとどうなっていたのか…。そんなことばかりを考え、それ以来、恐ろしくなり、『豆腐』に近づかなくなりました。


 その後、『豆腐』がどうなったのかと言うと、私が中学三年生の時に、後輩達が十人程でエアガンや金属バットで武装して押し入ろうとして近隣住民に通報され、警察の厄介となり、学校でも『不法侵入にあたるから今後はしないように』と厳重注意され、『廃墟巡り』ブームはなんとも馬鹿らしく終わりました。

 しかし私は今でも、あの地下室はどうなっているのか、何かがいるのか、という好奇心を殺し切れずにいます。



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